振られるはずだったのに、もしかして溺愛されてます……?  ~冷酷副団長に告白したら、秘密の恋人になりました~

振られるはずだったのに、もしかして溺愛されてます……? ~冷酷副団長に告白したら、秘密の恋人になりました~

  • 発売日2026.06.26
  • 価格¥880(税込)

※価格や発売日はストアによって異なります。

君は知るべきだ。俺がどんなに君を想っているのかを。

かつて自分を助けてくれた騎士に憧れ、辺境の騎士団の侍女となったルーシア。そこで出会ったのは、冷酷副団長と恐れられるハインツだった。彼の誠実さと優しさを知り恋をしたルーシアは、玉砕覚悟で告白。すると、思いがけず恋人になることに!? しかし交際は秘密にするという条件付き。もしかして、自分を気遣い断れなかったのでは……? そう思い至ったルーシアは身を引こうとするのだが、ハインツはそんな彼女に激情を露わにし――!? 互いの想いを確かめ合った二人。だがそこへ、柔和な微笑を浮かべるハインツの兄がルーシアに近づいてくる。やがて、ハインツの秘密主義の裏に隠された複雑な事情が明らかになり――。

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人物紹介

ルーシア

目が悪いというハンデを乗り越え、騎士団所属の侍女になる。一見おとなしそうだが、ハインツが悪く言われると黙っていられない。ハインツを諦めるために玉砕覚悟で告白したところ、まさかのOKをもらい動揺する。

ハインツ

近衛騎士団に所属するエリートだったが、ある事情から辺境の騎士団へやってきた。御前槍試合で勝ったことがなく、「価値なし(勝ちなし)」と揶揄されている。ルーシアとの交際を秘密にしているのも何か事情がある様子……。

試し読み

「君達、フローティア騎士団の侍女かい?」
 驚いたルーシア達は、振り返ってまた驚いた。
 そこに立っていたのは、目も覚めるような美青年だったからだ。
 金色の巻き毛に、キラキラと輝く翡翠の瞳。白地に青と金の糸で刺繍の施された近衛騎士団の制服は、まるで彼のために誂えられたかのようだ。
 眩しいまでに美しいその青年を前にして、仲間達は黄色い悲鳴を上げ、何故かルーシアの背後に重なるようにして身を隠した。
 仕方なく、ルーシアは仲間達を代表して挨拶する。
「は、はい。フローティア騎士団の者です。どうぞお見知りおきを」
 ルーシアの後ろで、仲間達は小声ではしゃいでいる。
「すっごい美形!」
「かっこいー!」
 確かに目の前にいる騎士はとてつもない美形だ。長身で体格も良い。美しさで右に出る者は、そうはいないだろう。
 けれどルーシアは、何故か彼が怖かった。目が、冷たい感じがする。
(でもこの人の声、何だか……)
 麗しの近衛騎士は、美しく微笑んだ。
「僕は近衛騎士団所属のエッカルト。ハインツはどこかな? 久しぶりに弟の顔が見られるのを楽しみにしていたんだけど見つからなくて」
 ルーシアは目を瞬かせた。
「ハイン……副団長のお兄様ですか?」
 似ていない、と内心ルーシアは思った。髪も目も顔立ちも、ハインツとエッカルトは似ても似つかない。
 ただ声だけは、目を閉じて聞くとハインツにそっくりだ。
 ルーシアの心を読んだかのように、エッカルトが少し肩を竦めた。
「あまり似てないだろう? 俺は母親似で、あいつは父親似だからね」
「そ、そうなんですね」
 ニコニコと愛想良く笑うエッカルトを、ルーシアはまじまじと見返した。
(ハインツ様のお兄様)
 そう意識すると、すさまじい緊張にルーシアは襲われた。
 プルプルと膝が震え出し、頬が強張る。
 初めて会う、ハインツの家族。
 できることなら好印象を持たれたい。
 そしてあわよくば親しくなって、ハインツの子供の頃のあれやこれやを聞き出したい。
「ハインツはフローティアでうまくやっているのかな? あいつは不愛想で誤解されやすいから、心配していたんだ」
 エッカルトは心配げに眉尻を下げる。きっとエッカルトは、弟思いの優しい兄なのだろう。
 口角を引き上げ、ルーシアは意識的に笑顔を取り繕った。
「心配ありません。副団長を尊敬しない者はフローティアには一人もいませんから」
「本当に? 君達侍女にも、迷惑かけてない?」
「とんでもない。副団長には、いつもよくして頂いています」
「そうか、よかった」
 安堵したようにエッカルトが微笑むと、仲間達が一斉に恍惚の溜息をつく。
 エッカルトは身を乗り出すと、ルーシアの背後を覗き込んだ。
「ハインツが羨ましいなぁ。フローティア騎士団は美人揃いなんだね」
「えぇ? そんなことないですよぉ」
「やだぁ、恥ずかしい」
 キャッキャと喜ぶ仲間達は、完全に乙女モードである。
 エッカルトが、ルーシアを見た。その意味ありげな眼差しに、ルーシアはビクリと首を竦める。
「君、名前は?」
「わ、私ですか?」
「うん。皆美人だけど、君が一番好みだなぁ。すごく可愛い」
 仲間達が一斉に黄色い歓声を上げた。
「ルーシア! 可愛いって!」
「ちょっと、やめてったら」
 ルーシアは同僚達を睨みつけたが、彼女達は気にする様子もなく騒いでいる。
 周囲にいた他の騎士団の者達が、度重なる歓声に何事かとこちらを注目し始めた。
(ど、どうしよう)
 頬を、冷や汗が流れた。
 エッカルトがどういうつもりでこんなことを言っているのかわからない。いや、勿論本気でルーシアを口説いているわけではないだろう。きっとエッカルトは田舎から来た侍女の一人をからかって遊んでいるだけなのだ。どうやら性格はハインツと真逆であるらしい。
 どうであれ、注目を浴びることに慣れていないルーシアにとって、この状況は居心地が悪い以外の何ものでもなかった。
 だが、下手な返答で冗談も解さないのかと心象を悪くしたくもない。何といっても、エッカルトはハインツの兄なのだから。
「あ、ハインツ副団長!」
 ヘレナの声に、ルーシアは振り返った。
(ハインツ様!)
 よかった、と安堵したのも束の間。早足で近づいてくるハインツはとんでもなく不穏な気配を纏っていた。
 まるで親の仇でも見つけたかのような形相のハインツに、誰もが怯えて後ずさる。
 ルーシアも例外ではなかった。
「ハ、ハインツ様?」
 一体どうしたというのだろう。
「どういうおつもりですか、兄上」
 ルーシアを背に隠すようにして、ハインツは兄であるエッカルトと対峙した。
 兄と弟。
 並んだ姿を改めて見ると、やはり二人は全く似ていなかった。
 長身ながら細身で、優雅な雰囲気を漂わせるエッカルト。
 エッカルトより長身で、厚い胸板と太い腕に日々の鍛錬が見て取れる、いかにも騎士らしいハインツ。
 似ていない、というより二人は対照的だった。決して相容れることのない、水と油のように。
「嬉しいなぁ。久しぶりにお前のそういう顔を見られて」