特別なお役目でアレの様子を見守っていたら、ツンな王子様がデレてきました

特別なお役目でアレの様子を見守っていたら、ツンな王子様がデレてきました

  • 発売日2024.05.31
  • 価格¥880(税込)

※価格や発売日はストアによって異なります。

き、君だって僕のことが好きだろう!?

第六王子オーレリアンの成人の儀で重要な役目を担う「聖導シスター」に選ばれたカティア。多くのシスターが憧れるお役目だが、まったく興味のなかったカティアは困惑するばかり。儀式用の離宮で王子と一ヶ月過ごすことになったけれど、オーレリアンは初対面から不機嫌かつ偉そうで、第一印象は最悪。しかし、彼が儀式を嫌がるのも当然のこと。なんと、王子の秘密のアレを見守るのが聖導シスターのお役目なのだ! 義務と割り切り、しぶしぶ役目をこなしていく二人。そんな中、徐々にオーレリアンの態度が甘く変わってきて……!?

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人物紹介

カティア

両親亡きあと修道院に拾われてシスターとして生きてきた。年に3回のワインが飲める日を楽しみに日々を過ごしている。オーレリアンのことは、いけ好かないと思っていたが、ちょっとかわいいところがあることに気づいてきた。

オーレリアン

第六王子。尊大な態度や物言いでカティアに引かれていたが、根は良い人で姪も大事にしている。成人の儀は、内容が内容だけに非常に不本意だが、こなさないと子供をつくれなくなると言われているため渋々受け入れている。

試し読み

(一体どんな人なのかな)
 あの矜持の高いリドエンヌが恋に落ちるのだから、第六王子はおそらく美男子なのだろう。
 聖導シスターの衣装となる純白の修道服に身を包んだカティアは、離宮内に作られた教会でひたすらに王子の到着を待っていた。
 修道服の定番は黒か紺色だけれど、王族の儀式という観点から聖導シスターの衣装は見た目を重視して作られているのだろう。修道服とは思えぬ高級そうな布地で装飾も美しく、金の糸で細やかな刺繍が施されている。最初に見た時は「こんなに素敵な衣装を着られるのか」と感動したものの、いざ袖を通してみると妙に重いし汚れが目立ちそうで怖い。
 今、教会内は寡黙な司教とカティアの二人きり。緊張のあまり胸がどくどくと早鐘を打ち、その音が他人に聞こえてしまうのではないかとさえ思う。
 カティアは第六王子の顔はもちろんのこと、性格も知らない。
 うっかり粗相をして不敬罪で首を刎ねられたらと最悪の事態にまで想像が及ぶ。重要な役目を持った聖導シスターをいきなり処刑するようなことはないと思うが、どうしても色々と考えてしまう。
 呼吸の仕方も忘れそうになるくらい緊張が高まった時、扉が開く音が耳に届いた。第六王子が来たのだろう。近づいてくる足音に、緊張が頂点に達して視界がゆがむ。
 跪いて待機していると声をかけられた。
「珍しい髪の色だな」
 跪くカティアの頭上から降ってきたのは凜とした声だった。男性にしては高めの声で妙な色気を孕んでいる。彼の声は耳に残り、緊張とは別の意味で胸が騒いだ。
「恐れ入ります」
 震える声でカティアは答える。
「顔を上げろ」
 命令されて顔を上げると、そこには王族特有の銀色の髪に、琥珀色の瞳をした青年がいた。すらりと細身で、身長はそれほど高くなさそうだ。
「僕が第六王子のオーレリアン・ポルステルだ」
 王族らしく、堂々とした態度の彼の顔はとても綺麗だった。眉の形が整っていて、くっきりとした二重で鼻筋もすっと通っている。リドエンヌが一目惚れしたというのも納得の美貌である。
 これほど美しい男性を見たのは初めてのことで、カティアもつい見惚れそうになるが、はっと我に返り挨拶をした。
「私が聖導シスターのカティアです」
 修道院に属するシスターには名字がない。カティアは名前だけ述べると、両手を胸の前で組み王族に対する礼をとった。この一週間で教えてもらった作法だ。緊張していたけれど、手の上下も違えずにきちんとこなす。
 顔を直視するのは不敬だと教わっていたから、彼の胸元に視線を落とした。
 一方、オーレリアンはカティアをなめ回すように見ているのがなんとなく視線でわかる。それから彼は、ひとつ溜め息をつくと衝撃的な発言をした。
「歴代の聖導シスターは揃って美人だったというが、お前はまあまあだな。まあ、悪くはないというところか」
(――はぁ?)
 思わず絶句した。いくらカティアが平民とはいえ、あまりにも失礼な物言いである。
(美人じゃないことくらい自分が一番よくわかってるわよ! それでも初対面の女性の容姿に物申すなんて! ……まあ、この人はそれが許される立場ということよね。さすが王族だわ)
 表情に出さないながらも胸がざらついていると、オーレリアンが言葉を続けた。
「しかし、その美しい髪は見事だ。これから一ヶ月、連れて歩くのには悪くないだろう」
「……はい」
 ストロベリーブロンドの髪はカティアの数少ない自慢であったが、褒められてもまったく嬉しくない。「連れて歩くのには悪くない」というのは愛玩動物に使うような発言だし、先程の発言が尾を引いている。
「立て」
 カティアは「はい」と返事をし、礼をといて立ち上がった。一瞬だけ視線が交わるが、すぐに彼の胸元に視線を落とす。
「今日この瞬間からお前は僕の聖導シスターとなって、朝から晩まで一緒にいることになる。鬱陶しいが、こうしなければ僕は子供を作れなくなってしまうからな。二番目の兄上のようにはなりたくないし仕方がない。せいぜい僕の邪魔をしないようにしてくれ」
 オーレリアンは美しい顔をしかめながら告げる。
 成人の儀の内容が内容だけに儀式への嫌悪感が相当強いようだ。まるで八つ当たりをするような言いかたである。
(よっぽどご機嫌ななめみたい。まあ、その気持ちもわかるけど)
 この王子とうまくやっていけるのか不安しかないものの、一ヶ月の辛抱である。
「頑張りますので、よろしくお願いします」
 もやもやする気持ちを抑えて、なんとか笑みを浮かべてみせた。そんなカティアをオーレリアンは無言で見つめてくる。
「……王子様? どうなさいました? ご気分が優れませんか?」
 急に黙りこくった彼に問いかけると、彼は首を横に振った。
「いや、なんでもない。僕は行くところがある。ついてこい」
 オーレリアンはさっと身を翻して教会から出ていこうとする。カティアは司教に一礼すると、慌てて彼のあとを追った。