
私の祝福のせいで俺様陛下に「おもしれー女」認定されて求婚されました
- 発売日2026.10.30
- 価格¥858(税込)
※価格や発売日はストアによって異なります。
そんな顔で見つめられたら、離れがたくなるんだが。
侯爵令嬢ながら、騎士団の事務官として働くミレイユ。彼女は人には言えない祝福(ギフト)を持っていた。それはどんな鍵でも開けられて、壁に扉を作れる珍しいもの。ある夜、残業帰りに祝福で近道したミレイユは、不審者と遭遇。咄嗟に急所を蹴り上げた相手は、なんと国王マクシミリアンだった!? 青くなるミレイユに、彼は「気に入った。俺の嫁に来い」と面白そうに言い放つ。翌日、国王付きの秘書官に抜擢されたミレイユは、隙あらば仕事を抜け出す彼を捜しまわる羽目に。一方、マクシミリアンは毎回迎えに来てくれるミレイユにますます興味を持ち――。やがて、彼の秘められた祝福と苦悩を知ったミレイユは、力になりたいと思い始めるのだが……。
『私の祝福のせいで冷徹宰相代理の秘めた欲望が止まらなくなりました』で登場した国王マクシミリアンの恋を描いたスピンオフ!
人物紹介

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ミレイユ
どんな鍵でも開けられ、壁に扉を作ることもできる稀有な祝福を持つ。責任感が強く、相手が誰であろうと物怖じせず意見する性格。初対面でマクシミリアンの急所を蹴り上げてしまい、なぜか興味を持たれて求婚されるが、本人は冗談だと思っている。

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マクシミリアン
豪放磊落な現国王。隙あらば仕事場から抜け出す自由人だが、どうやら彼なりの理由がある様子……? ひょんなことからミレイユと出会い、彼女の稀有な祝福と、国王相手にも物怖じしない性格を面白がるようになる。
試し読み
――どうしてこんなことに……。
市井に住む女性が着るような服を身に着けて、ミレイユは王都の街を歩いていた。
隣には従者の格好をしたマクシミリアンが堂々と歩いている。一応変装のつもりなのだろうが、こげ茶色のかつらと色付きの眼鏡をかけているのが妙に胡散臭く見える。
――こんな従者、いる?
町娘が軽薄な商人に付きまとわれているようにも見えそうだ。気弱な女性にぴったりくっついて、高額な商品を買わせる詐欺師にも思えてきた。
「あの、陛下。せめて色付きの眼鏡はやめた方が……」
「そうか? リュシアンは似合ってるって言ってたが」
似合ってはいるのだ。マクシミリアンの口調と相まって、なんらかの相乗効果が醸し出されている。
が、悪目立ちはよろしくない。
マクシミリアンは少し残念そうにしながらも、懐から色のついていない眼鏡を取り出して装着した。長めの前髪がうまく彼の瞳の色を隠してくれそうだ。
「ところでミレイユ。俺のことはマックスとでも呼ぶように」
「え? さすがにそれは……」
マクシミリアンの愛称ではないか。国王をそんな親しげに呼ぶなんて畏れ多くて困る。
「これも仕事だ。俺はこれから口調を改めるぞ。お前も俺を従者として扱え」
――無理です!
そもそも何故国王がふらふらと街に降りているのかもわからない。
城を抜け出すと言われたとき、ミレイユは当然全力で「ダメです」と諫めた。それが自分の仕事のひとつだからだ。
だが今回はどういうわけか宰相の承認まで得ていたため、渋々飲むしかなかった。国王がお忍びで城下を歩くことはこれまでもたびたびあったそうだが、事前に承認を得てミレイユまで巻き込んだのははじめてだ。
――まあ、今日は陛下のお休みの日だから、なにをしていても陛下の自由ではあるけれど。
一応少し離れて騎士も変装してついてきている。万が一に備えて、護衛をつけるのが条件だった。
「どうかしたのですか、お嬢様? 浮かない顔をされていますね」
「ひっ! 気持ち悪い!」
突然口調を変えてお嬢様と呼ばれ、ミレイユはぞっとする。口から飛び出た失言はミレイユの本心だったが、これはいくらなんでもあまりにも不敬だ。慌てて謝罪する。
「すみません、つい」
ぶはっ、と笑い出したマクシミリアンはいつも通りだった。
変装していても彼の本質は変わらないらしい。
「これはなかなか愉快ではまりそうだな。うん、悪くない」
「私の心臓を試してるんですね? というか、そろそろ行き先と目的を教えてください」
今朝、いつも通りに職場に行ったら「出かける準備をしろ」と命じられたのだ。手渡された衣服は簡素なワンピースだったが、上質な生地が使われている。
――お忍びで王都を散策している令嬢と従者に変装するなんて、退屈しのぎなんじゃない?
とはいえ、ある意味一日デートのようではないか。仕事だと言い聞かせつつも、なんだかミレイユはドキドキしてきた。
「お嬢様、ちゃんと口調を改めないとお仕置きしますよ」
マクシミリアンはリュシアンを真似ているのかもしれない。
お仕置きという言葉は聞かなかったふりをして、ミレイユは「マックス」と小声で呼んだ。
「ちゃんと教えてちょうだい。どこへ行くの?」
「そうですね、まずは腹ごしらえをしましょうか。その後は雑貨店やお嬢様が行きたいお店に寄って、カフェでお茶をしてから帰りましょう」
――それってただのデートでは?
絶対なにか理由があるはずだ。気まぐれでミレイユを振り回しているわけではないだろう。
いくら面白いことが好きな男でも、無意味なことはしない。だが、往来でそれを説明するつもりはないということらしい。
「……わかったわ。じゃあ、お昼ご飯を食べましょう。どこがいいかしら」
変装しているとはいえ、マクシミリアンは目立つ。長身で体格がよくて、立っているだけで一般人とは少し違ったオーラが出ている。自然体なのに隙がないのだ。
――女性客が少ないお店にしましょう。陛下だってばれたら大騒ぎになるもの。


