私の祝福のせいで冷徹宰相代理の秘めた欲望が止まらなくなりました

私の祝福のせいで冷徹宰相代理の秘めた欲望が止まらなくなりました

  • 発売日2024.10.25
  • 価格¥858(税込)

※価格や発売日はストアによって異なります。

他の男にも私と同じことをすると?

稀有な祝福(ギフト)を買われて、若き宰相代理リュシアンの「ストレス解消係」に任ぜられた伯爵令嬢レティシア。ただの水を美酒に変え、その酒を呑んだ人の秘密の願望を吐き出させるという祝福の力で、リュシアンのストレス発散を狙う。だが、回を重ねるごとに、彼の願望はエスカレートしていって……!? 「私の頭を撫でてほしい」と子供のように甘えられ、「もっと私に触れてほしい」と迫られて、普段の生真面目でストイックな彼とのギャップに、レティシアは胸の高鳴りが止められなくて……。

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人物紹介

レティシア

自分の祝福がよくわからず困っていたが、成人をきっかけに特殊な能力が開花したようで、ひょんなことから国王に目を付けられる。リュシアンの仕事中毒ぶりを心配している。

リュシアン

宰相補佐だったが、父である宰相がぎっくり腰で療養することになったため、代理を務めることになった。眉目秀麗、頭脳明晰だが、堅物すぎて周囲から畏怖され遠巻きにされている。

試し読み

「……レティシア」
「っ! はい、なんでしょう? 眠いですか? お水飲みますか?」
 ほんのりと頬が上気している。潤んだ瞳が色っぽい。
 ――シャルディエ卿が酔った姿は他の人には見せられないわ……部屋に連れ込まれて既成事実を作らされそう……!
 怖い想像をしてしまった。もしも彼が女性に襲われそうになったら助けに行かねば。
 ふいに、テーブルの上に置いていた手を握られた。
いきなりの接触に心臓がドキッと跳ねた。
「シャルディエ卿?」
「君は何故、そんなふうに他人行儀に私を呼ぶんだ」
「……はい?」
「私のことをシャルディエ卿などと。壁を作られているようだ」
 ――え? でも最初に呼び方の許可をいただいているのですが!
 ギュッと片手を握られる。彼の手の温もりが直に伝わってきて、レティシアの鼓動を忙しなくさせた。
 もしかしたらこれが彼の願望なのだろうか。昨日と違い、祝福の副作用がささやかで可愛らしい。
それにいつもの丁寧語が抜けている。もしかしたら酔うと口調が変わるのかもしれない。
「ではなんとお呼びしたらよろしいですか?」
「……リュシアン」
 ぽつりと呟く姿が、レティシアの弟の拗ねる顔と重なって見えた。
 年上の男性に抱く感情ではないが、なんだか胸の奥がくすぐられる。
 ――この前も思ったけどさっきまでは頼もしい大人の男性だったのに、お酒が入ると可愛らしくなるなんて。変化が著しくてちょっとずるいのでは!
 酔っていないのに身体が熱くなりそうだ。レティシアは平常心を装いながら返答する。
「呼び捨てはできないので……それでは、リュシアン様とお呼びさせていただきますね」
「ああ、それでいい」
「……ッ!」
 不意打ちの笑顔を食らい、レティシアは大きく息を吞んだ。
 ――美形の笑顔の破壊力が凄まじい……!
 手を握られたまま滅多に見せない笑みを見せられて、汗も心臓もおかしなことになりそうだ。気のせいじゃなければ手汗が出ている。
 ――ベトベトした手に気づかれたくない……そろそろ手の自由を取り戻したい。
 だがリュシアンの大きな手にすっぽりと握りしめられている。一見彼は華奢に見えるが、ちゃんと力強い男性なのだと思わされた。
 欲望を口にしたのだからそろそろ寝てくれるだろう。
 あと少しの辛抱だと思いつつも、今すぐ手を放してほしい。
「あの、リュシアン様。私の手を放してもらっても……」
「レティシアの手は小さくて可愛いな」
「え」
「柔らかくて気持ちがいい」
「わあぁ……っ!」
 手をくるりとひっくり返され、手首の内側にキスをされた。そんなところへのキスなど今までされたことがない。
 ――酔ってる! 確実に酔っぱらってるんだわ!
 身体が熱くなってきた。全身汗をかいている。
 レティシアはグイッとグラスを飲み干した。酔えないことはわかっているが、勢いづけのために。
「リュシアン様! そろそろ寝ましょうか。眠いですよね? 朝早かったですし疲れましたよね!」
 ――そうよ、さっさと寝てもらおう!
 色気駄々洩れで普段とは違う側面を見せられたら、レティシアの理性が揺さぶられてしまう。願望というにはささやかなものだったが、今夜はこれで十分だ。
 きちんとした料理を食べて熟睡できたら、これまで蓄積されていたストレスも大分減るだろう。生活改善には役立っているはずだ。
「そうか、寝るのか」
「ええ、寝ましょう。きちんとお水も用意しておきますので。水分も忘れずにとってから寝てくださいね。あ、歯も磨いておきましょう」
 許可を得てからリュシアンの寝室の扉を開けた。思った通りスッキリした部屋にはなにも置かれていない。
 背中を押して洗面室で歯を磨かせる。レティシアは弟の面倒をみているような気分になってきた。
 ――そう、弟のときと同じだと思えばいいのよ。恥ずかしくなんてないわ!
 歯磨きを終えたリュシアンを寝台へ誘導し、そのまま横に寝かせた。寝間着に着替えさせたいところだが、さすがにそこまではできない。
 レティシアの祝福で酔うと皆すぐに眠りに落ちた印象だったが、今日のリュシアンは余裕があるようだ。
「では、おやすみなさい……」
 寝台から離れようとした瞬間、レティシアの重心が後ろに傾いた。
「えっ?」
 ぼすん、と寝台に尻もちをついてしまう。
「リュシアン様?」
「どこへ行く」
 レティシアの手首を引っ張ったらしい。眠そうにしていたのに、今は拗ねたように眉根を寄せていた。
「私も部屋へ戻りますので……」
「嫌だ」
「え?」
「レティシアが傍にいないと寝ない」

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